![フライス加工についての基礎知識とメリット・種類について主に解説](https://kk-saito.takumido.co.jp/wp-content/uploads/2023/03/03.png)
フライス加工は、主に金属などの材料を削って加工物に仕上げる工作機械です。金属加工のなかでも代表的な方法で、自動車や機械などのさまざまな工業用部品の加工に使用されており、多くの製造現場で導入されています。フライス加工について基礎的な知識を解説し、メリットなどを合わせてご紹介していきます。
フライス加工とは
フライス加工とは、主に金属などの材料を削り出して製品に仕上げる機械のことです。詳しく解説していきます。
フライス加工の概要
フライス加工は、切削する加工物をテーブルに固定して切削工具を回転させることで、穴を空けたり溝を掘ったりなど、削り出していく加工技術です。加工物は、主に機械の部品などに用いられています。
切削工具は回転に加えて垂直方向に移動し、加工物を乗せる台は前後左右に移動します。さらに切削工具にはさまざまな種類があり、削り出す面積や深さを計算して加工を施すことで複雑な加工も可能となり、精度の高い加工物が仕上がります。
旋盤加工とフライス加工の違い(刃物・加工品・加工法)
加工物を削り出す技術のことを、切削加工といいます。切削加工にはさまざまな方法があり、フライス加工はそのひとつです。
旋盤加工とは、切削する加工物を回転させ、切削工具を当てることで削り出していく加工です。そのため、円柱状の加工物に適した加工技術です。旋盤加工は加工物が回転し、フライス加工は切削工具が回転するといった違いがあります。
フライス加工の種類
フライス加工ではどのような加工ができるのか、種類についてご紹介します。
平面加工
加工物を平らな面に削り出す加工です。加工物を固定している台を前後左右に動かすことで、平面に仕上げていきます。
側面加工
加工物の側面を削り出す加工です。平面加工とは対照的に、切削工具を上下に動かしながら側面を切削していきます。
段加工
段加工は、平面の部分に段差をつけるため、平面と側面を同時に切削していきます。工具の種類を変えることで、段差の深さを調整できます。
溝加工
加工物に溝を掘る加工です。凹みのような形状で削り出す加工も可能です。
穴加工
ドリルの切削工具を用いて穴を開ける加工も可能です。切削加工機械のひとつに穴を開ける加工であるボール盤があります。そのボール盤と同じような加工で、穴の深さも調整が可能です。
フライス加工のメリット
フライス加工のメリットについてご紹介します。
複雑な形状のものを加工できる
フライス加工では、工具の種類や加工の方法が多様にあります。正面や側面など加工する方向を変えたり工具の種類を変えたりでき、複雑な形状でも加工が可能です。
高精度な加工が可能
機械の動きをプログラミング制御することで、0.01mm単位での寸法管理が可能です。同じ品質のものを、精度を保ったまま大量生産も行えます。
コストが比較的安い
フライス加工を含む切削加工は、他の加工技術に比べてコストを低く抑えられます。プレス加工や鋳造加工など金型が必要な加工は、少ロットの生産だとコストが上がったり、形状を変更することも困難です。
多彩な加工が可能
さまざまな材料やサイズの切削が可能です。金属やプラスチックなど削れる材質であれば加工が可能です。
フライス加工で使用される工具の種類
フライス加工で用いられる工具の刃先はフライスと呼ばれます。フライスにはたくさんの種類があり、加工の内容によって使い分けます。フライスの種類と特徴をご紹介します。
エンドミル
ドリルのような形状で、先端と外周に切れ刃を持ち、溝を掘るなどの面積の小さな加工が可能です。さらに、刃先は細いものの、平面加工や段加工なども可能であり、多様な加工ができる工具です。そのため工具を交換する手間も省けます。
正面フライス
正面フライスはフェイスミルとも呼ばれ、円柱状の先端部分に刃がついている形状をしています。加工物の表面を平行移動しながら平らに加工できる工具です。工具と加工物の接点が広いため、一度に切削できる面積が広く効率良く切削が可能です。
溝フライス
溝を掘る専用のフライスで、TスロットやT溝フライスとも呼ばれます。刃幅のサイズによって溝の仕上がりが異なります。エンドミルでも溝加工が可能ですが、より精度が高く仕上がりスピードも早いのが特徴です。
平フライス
平フライスは円柱状の外径にエッジの溝が複数あり刃となっている、主軸が水平方向に向き、縦方向に回転しながら切削していきます。荒削りの加工や中仕上げに用いられる工具です。
側フライス
側フライスはサイドカッターとも呼ばれ、歯車のように溝があり、側面を削る工具です。平フライスと同じく、主軸は平行に向き、縦向きに回転しながら切削し、荒削りや中仕上げに適しています。
フライス加工で使われる機械の種類
フライス加工にはさまざまな工作機械があります。種類と特徴についてご紹介します。
汎用フライス
切削工具と加工物を固定する台を、手動で位置を変える工作機械です。技術者のスキルによって精度が異なる懸念があり大量生産には不向きですが、試作品を加工したり、一点物の特注品などを加工したりする際に用いられます。手動で操作を行うため、複雑な加工も可能です。
NCフライス
NCフライスは、機械の動きをプログラミングして加工を施す機械です。NCは「Numerical Control」を略したもので、数値制御の意味があります。切削工具や加工物の動きを数値化してプログラミングをするため、技術者のスキルに関係なく同じ品質を保ちながら大量生産に向いています。現在ではほとんどのフライス加工にNCフライスの工作機械が用いられています。
マシニングセンタ
マシニングセンタは、切削工具を自動で交換できる装置を組み込んだ工作機械です。複雑な切削加工では工具を交換して加工を進めていきますが、その都度人の手で工具を交換していると手間となります。効率良く複雑な加工が可能となります。
フライス加工に必要なスキル
フライス加工は、加工形状や材質に合わせた工具の選定が重要です。また工具の特性と「送り」といわれる加工物の移動や、工具の回転量などを考慮する必要があります。
フライス加工は回転して切削するため、加工できない形状もあります。例えば三角形状の加工がその代表例で、溝や穴の角にはアールが残ります。フライス加工の特性を熟知していれば、設計の段階でできない加工は可能な加工に変更することや、工具の取り替え作業を低減させるなどの工夫が可能となります。
まとめ
以上、フライス加工について解説いたしました。フライス加工は、さまざまな切削加工が可能であり、製造現場には必要不可欠な工作機械です。加工物に最適な工作機械や工具を使い分けることや、フライス加工の特性を考慮して設計することで、作業効率が一段と上がるようになります。